APRIL TRUE/エイプリルトゥルー 第6話/全7話

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    APRIL TRUE ~エイプリルトゥルー~ 第6話/全7話      
                              古新 舜

「母さん、冬に生まれたから冬美って言うんだ。俺は春に生まれたから春珂。二人して誕生日に桜が祝ってくれてるね、ってよく言ってたよ」はにかんだ表情に、久しく見ていなかった彼の素顔を見ることができた。それから、彼とたわいもない話をした。学校での出来事やこの土地のこと、小さい頃からずっと一緒だった訳だから、話せばそれは全て彼との共通の出来事であり、そんな二人の短い歴史を振り返りながら延々と喋り続けた。合間、家のことが少し気になったが、きっと姉がうまくやってくれてるのだろうと、出かけ際の親指を信じることにした。
「あのさ……冬桜ってなんで冬に咲くか知ってるか」
「さあ、なんでだろ」
「あの桜はおっちょこちょいなんだよ、おまえみたいに」
「何それ――」思いがけない内容に思わず笑ってしまった。
「おまえおっちょこちょいだよ」
「だから何よ」
「亮介のことが好きだったんだろ……」「えっ?」
 予想外の言葉に少し戸惑う。亮介というのは、いつも春珂と一緒にいる男の子のことだ。雰囲気はおっとりしているけども、勉強も運動もよくできる男の子のことだった。
「おまえ、元気なかったからさ、三学期ずっと」ドキッとさせられた。何も話しかけてくれなかった彼は、私のことをずっと見ていてくれたんだ。そんな風に思うと、とても温かいものがこみ上げてくる。
 私は今の時間が気になった。まだ二十四時を越えてないよね。エイプリルトゥルー終わってないよね……。ううん、たとえ三月三十一日が過ぎていたとしても、今の私にはもう突き進むしかない。今だったら、今の私だったら――。
「あのさ、私……」突然の大きな声に彼は思わず目を丸くした。
「わたし、春珂君のことがずっと好きだった」
 思い切って発した言葉は告白というよりも押し上げるように吐き出された気持ちの塊だった。彼は驚いた表情を見せる。また先ほどの長く続いた沈黙の時間がちゃぶ台の上にのしかかる。と思いきや、沈黙は私に負けないくらいの大きな笑い声ですぐにかき消される。

��当小説に関するコメントは三月七日、全話終了後にお願いします)

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